研究成果
森林景観における地域個性の指標化に関する研究
平成12・13年度文部省科学研究補助金 基盤研究(C)(2) 研究成果報告書(平成14年6月)より
本研究では、主体がどのような物理的特性により森林景観を識別するかについて、中景域にある森林写真を用いた分類実験と、その分類理由に関するインタビュー調査を通して検討をおこなった。その結果、「樹冠の形」「樹種」「パターン」「色」「明るさ」が森林景観の差異の識別にとって重要な要因であることが明らかになった。上記の分類実験をもとに森林景観写真の類似度行列を作成し、クラスター分析によって森林景観相互の類似性を階層構造として求め、各クラスター内で共通する森林景観の特徴を言葉として抽出した。その結果、森林景観の識別に際してもっとも重要な物的項目は、樹冠の形であり、「尖度:尖っている・丸い」、「整然さ:整然としている・整然としていない」、「大きさ:大きい・小さい」が細分項目として抽出された。
また、樹冠の形については、テクスチュアの観点から指標の定量化について、フラクタル次元の概念を用いた分析をし、検討をおこなった。調査地としては、奈良県吉野林業地、大分県日田林業地を取り上げ、人工スギ林の景観に関して、両者の比較・分析をおこなった。吉野は実生による高密度での植栽と利用間伐の繰り返しの結果、肌理の細かい柔らかなテクスチュアを示すのに対し、日田はエリート種の苗を丁寧に植樹すること、そして植栽密度も吉野の1/3と低いため、整然としてパターンの揃った硬質なテクスチュアを示すことが明らかとなった。
目次
- 第Ⅰ章 はじめに
- 1. 域森林景観とは
- (1) 森林景観に対する2つのアプローチ
- (2) 地域森林景観の重要性
- 2.地域個性の指標化について
- (1) 地域個性の指標化の必要性
- (2) 地域個性の指標化のための方法
- 1. 域森林景観とは
- 第Ⅱ章 森林景観の識別に関わる視覚的物理特性の抽出
- 1.はじめに
- 2.調査の方法
- (1) 対象景観
- (2) 呈示方法
- (3)プレ調査
- (ⅰ)プレ調査1
- (ⅱ)プレ調査1の結果
- (ⅲ)プレ調査2
- (4)物理的特性項目把握実験
- (ⅰ)被験者
- (ⅱ)提示写真
- (ⅲ)方法
- (5)形態的特徴把握実験
- (6)嗜好把握実験
- 3. 分析の結果
- (1)物理的特性項目把握実験結果
- (2)形態的特性把握実験結果
- (3)嗜好性把握実験結果
- 4. 第Ⅱ章まとめ
- (1)考察
- (2)結論
- 第Ⅲ章 地域森林景観の指標の定量化について
- 1. はじめに
- (1)既往の研究に見る景観の物理特性の抽出について
- (2)本章の目的
- 2.定量化の方法
- (1)対象地域の景観の特徴
- (ⅰ)奈良県・吉野
- (ⅱ)大分県・日田
- (2)テクスチュアの定量化
- (ⅰ)テクスチュアの定量化の方法
- (ⅱ)テクスチュアの分析手順
- (1)対象地域の景観の特徴
- 3.分析の結果
- (1) テクスチュアの規則性
- (2) 輪郭線の複雑さ
- (3)2地域の比較
- (ⅰ)テクスチュアの規則性
- (ⅱ)輪郭線の複雑さ
- 4.第Ⅲ章まとめ
- 1. はじめに
- 第Ⅳ章 おわりに
- 1. 今後の展開について
- 2. 今後の課題
- 第Ⅴ章 参考・引用文献目次