農業資源としてのハゼ栽培~熊本県水俣市~

熊本県水俣市のハゼ

1.景観の特徴:ハゼ畑がつくる、もこもこしたテクスチュア

水俣市侍地区では、約10,000本のハゼが畑に植えられ、面を構成している。ハゼは羽状複葉であるため、細長い単葉がまとまってひとつの塊をつくっており、それが無数に集まることにより、もこもこした面を形成している。

また、畑の四隅にハゼの木が植えられているのも、特徴的であり、細川藩政期に「作物の生育の妨げにならないところにはどこにでもハゼが植えられた」名残がうかがえる。

2.景観を支える背景:ハゼが再び注目され始めた
宝暦年間
(1750年頃~)
細川藩の政策として至る所で栽培実を和ろうそくや鬢付け油の原料として利用
・生活スタイルの変化
・石油化学製品の登場
明治・大正期
(1870年頃)
需要減少による価格低下で、生産量激減
・果樹栽培の奨励
昭和40年頃みかん畑への移行によりハゼの伐採が進む
昭和55年頃オレンジ自由化によるみかんの大暴落で、ハゼの見直し・植林がすすむ
現在地元振興会による植林の推奨
3.基礎情報:日本のハゼの30~40%を水俣で栽培(全国一)、ハゼは木蝋の原料となる
表.ハゼ採取量、木蝋生産量
ハゼ採取量木蝋
水俣市熊本県全国全国生産量輸出量
平成8年40404595757
平成9年170170470103104
平成10年30304117070
平成11年100100535101102
平成12年1515--93

木ろう:櫨の実を粉にし、熱を加えることによる蝋分を溶かし、圧力を加えて搾り出したもの

図.木ろうの使用割合

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参考資料:福岡県・福岡県特用林産振興会『ハゼと木蝋』(1992)、侍街道「ハゼのき館」パンフレットなど

2005年 工藤豊・松前文環・原泰之・今浦友恵

現地調査日程 2005年5月31日〜6月1日

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published on 2008-3-26
©2008 Laboratory of Forest Landscape Planning and Design
東京大学大学院 農学生命科学研究科 森林科学専攻 森林風致計画学研究室