十勝平野防風林
1.地域の概況と基礎情報
北海道は、その広大な面積から大きく14の支庁に分けられ、各支庁により実質的な行政がなされている。また、北海道全域において、防風林が整備されている。
それらの中で、特に防風林の整備延長が長い十勝を対象エリアとした。
(1) 地域の概況
十勝支庁は、
(2) 基礎情報
1.地形図
2.植生図
3.空中写真
4.施業、管理計画関連図
2.森林景観の特徴
(1)防風林の景観
十勝地方に限らず、北海道の開拓はアメリカを模範に計画された。そのため、農道がグリッド状に交差している。また、農用地の敷地割りにも直交法が用いられており、公道や農道から、道路に平行しているもしくは直交している列状の防風林を見ることができる。これら列状の防風林により、広大な農用地に仕切りが入り、遠近感をかもし出すと同時に、建築構造物や山などの遮断するものがないため、全体を一望することが可能となっている。すなわち、「図」としてもとまりやすい景観である。
また、防風林には、国によって整備された「基幹防風林」と農家などの土地所有者によって植林された「耕地防風林」に分けられる。基幹防風林は現在、幅員が平均40m前後(最大約60m)となっているが、耕地防風林は列植され(多くても4列程度)、幅員はおよそ広くても8m程度と考えられる。こうした、透過性のある耕地防風林と、アイストップとなりうる幹線防風林が入れ子状になっている。
防風林に使用されている樹種の多くはカラマツであるが、一部シラカバやトドマツ、カシワにより構成されているものもあり、カラマツの枝葉が色づき、落ちた後の秋冬は、特に樹種の違いによる景観の変化を感じることができる。
(2)屋敷林の景観
十勝地方では、耕作地の一角に土地所有者の住居があり、その周囲を防風林で取り囲んでいる(もしくは、風向きに対して1、2方向)。樹種は、概ね常緑樹のトドマツであり、アイストップとなっている。
3.景観の管理と形成史
(1)管理の仕組み
十勝支庁管轄の地域内の防風林は、大きく市町村林と民有林に分かれている。
市町村林は、基幹防風林として国により整備された林が払い下げされたものであり、全て保安林指定されている。その指定内容は防風保安林であったが、近年、カシワ原生林の量やサクラの自生している場所を、保健保安林指定し、中に遊歩道を設けるなどする動きも現れている。また、その管理主体は十勝地方内の17森林組合がそれぞれ担当している。
一方、民有林は、地域森林計画の対象となっておらず、基本的に土地所有者(主に農家)に委ねられている。近年は、農場機械の大型化(農薬散布など)に伴い、防風林が作業。しかし、十勝の農業において防風林は欠かせないもの、という認識も依然として強い。
また、市街地に住む住民のボランティア活動への参加意欲は強く、市町村有林の管理には参加が可能であるものの、民有林は、受け手(農家)側の意識もあってボランティアの手が入ることがない状態である。
(2)形成史
明治16年 開拓団の入植
明治28年 十勝農事試作場
明治29年 土地の払い下げ開始
明治30年 「北海道国有未開地処分法施行規定」の発布
第11条 開墾を目的とする貸与地に於いて風防風致又は薪炭用として其地籍の十分の一以内を存置することを得る
大正7年 区画測設心得
防風林は50間以上100間以内の幅を存置すること
大正8年 殖民地選定心得 『防霧林』の導入
・ 現に林相をなさざるも将来植樹造林によりて防風若しくは防霧林の設定を必要と認めたもの(森林状態をなしていない場合にも将来を考え防風林予定地としてあらかじめ土地利用区分上は防風林に算入していた)
防風林:国有未開地上に設定→国有保安林へ編入 基幹防風林 |
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基幹防風林を補完する小区画の防風林設置 耕地防風林 |
昭和6年 冷害発生
昭和8年 「耕地防風林造成奨励規定」
造成費の半額を補助
耕地防風林 本格的な植栽開始 |
昭和26年 防風林の市町村への払い下げ(第二次世界大戦後保安林政策の転換)
基幹防風林 保安林から農地に転換 ↓ 幅180mが40mに縮小 |