地域森林景観とは

地域森林景観とは?

日本の森林は地域ごとにさまざまな様相を呈しています。各地の森林景観は、その土地の気象や地形などの自然条件が生み出す植生の状況と、日々の暮らしにおける地域の人々と森林との関わり方の歴史とによって形成されるものです。つまり、地域によって人と森林との関係は様々であり、地域ごとに個性のある森林景観が生まれるのです。こうした森林景観の個性や特性は、表面の肌理(きめ)や視点と対象までの距離、色彩などの見え方に表れたり、森林と田畑や集落などとの関係に中に表れてきます。こうした地域ごとの自然、人々の暮らし、歴史や文化などの相互関係により生じた森林景観を「地域森林景観」と呼んでいます。

なぜ地域森林景観が重要なのか?

地域の景観の中で、森林は多くの場合、背景として扱われます。もちろん吉野の桜や嵐山の紅葉などのように森林が主役になる景観もあります。しかし通常は、景観としての森林の存在感は薄く、人々に意識されることはめったにありません。しかしながら、背景とはいうものの森林景観が異なれば地域の雰囲気も大きく異なります。森林景観は地域の個性や印象を伝える大事な要素の1つです。地域ならではの景観、地域らしい景観を形成していく上で、森林と地域の人々との関わりを反映した森林景観は重要な役割を果たしています。地域らしさや地域のアイデンティティーを支え、その結果として国土全体での景観の多様性を形成、保全していくためには地域森林景観は重要なのです。

どのように地域森林景観を維持するのか?

どのように地域森林景観を維持するのかという問題は一概に解決できるものではありません。なぜなら、地域により事情が異なるからです。いわゆる人工林と雑木林では、その維持、管理の仕方は異なりますし、生産を目的とするのか、防災の役割を期待するのかでも取り扱いは異なります。また予算、人手の問題で維持が困難という場合も多いでしょう。しかし、まずは地域の人々の中で、保全し維持していくべき森林景観の目標像を共有することが重要です。目標像が明確になれば、地域の住民や行政、企業などが協力し合って保全、管理していく手段を探っていくことが可能になります。観光や教育などへの活用を通して、地域の人々の帰属意識や誇りを高めていくことが維持につながるかもしれませんし、都市住民をはじめとする域外の人々の協力を得ながら進めていくことも可能かもしれません。森林管理の目標像としての「地域森林景観」を共有することができれば、保全や維持につながる方策を見つけてゆけるのではないでしょうか

HOME 地域森林景観とは
published on 2008-3-26
©2008 Laboratory of Forest Landscape Planning and Design
東京大学大学院 農学生命科学研究科 森林科学専攻 森林風致計画学研究室